花粉症/舌下免疫療法
花粉症の治療
花粉症に使用される抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)は多数ありますが、くしゃみや鼻水、鼻詰まりの鼻炎症状と目のかゆみなどの眼症状を改善する効果がありますが、気になるのは眠気や倦怠感などの副作用です。
抗ヒスタミン薬には現在、第一世代と第二世代がありますが、当院では、患者様の症状に合わせて、第二世代抗ヒスタミン薬を中心に、鼻づまりが強い場合には、ロイコトリエン受容体拮抗薬を適宜併用しています。
■第一世代と第二世代抗ヒスタミン薬の主な薬剤
■第一世代:
第一世代抗ヒスタミン薬は、抗ヒスタミン作用だけでなく、眠気、または、口渇や便秘、排尿困難などの抗コリン作用もあります。
レスタミン(ジフェンヒドラミン)、ポララミン(クロルフェニラミン)、アタラックスP(ヒドロキシジン)、ピレチア(プロメタジン)など
■第二世代:
第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代と比べて眠気が弱く、抗コリン作用も少ないことが特徴です。
アレグラ(フェキソフェナジン)、アレジオン(エピナスチン)、アレロック(オロパタジン)、エバステル(エバスチン)、クラリチン(ロラタジン)、ザイザル(レボセチリジン)、ジルテック(セチリジン)、タリオン(べポタスチン)、デザレックス(デスロラタジン)、ビラノア(ビラスチン)、ルパフィン(ルパタジン)など
■ロイコトリエン受容体拮抗薬の主な薬剤
抗ヒスタミン薬以外に、アレルギー性鼻炎に効果があるロイコトリエン受容体拮抗薬は、特に鼻閉(鼻づまり)に効果的です。
プレス、シングレア(モンテルカスト)、オノン(プランルカスト)など
※注意:総合感冒薬のPL顆粒やPA錠には、第一世代の抗ヒスタミン薬(プロメタジン)が混合されていますので、眠気が強くでるようですし、抗コリン作用で、口渇や便秘、排尿困難などの症状がでる場合もあるようなので、PL顆粒に抗ヒスタミン剤の併用は注意が必要です。
(参考)
■効果が強め(個人的見解)
<1日1回服用>
〇ビラノア20㎎(ビラスチン)眠気なし 即効性あり ただし、空腹時服用
〇ルパフィン10㎎(ルパタジン)眠気あり 鼻閉に効果あり 即効性あり
〇ジルテック10㎎(セチリジン)眠気あり
◎ザイザル5㎎(レボセチリジン)眠気少ない ジルテックの改良 ジルテックより少量で効果も持続もあり
◎エバステル5㎎(エバスチン)眠気少ない
◎アレジオン20㎎(エピナスチン)眠気少ない
<1日2回服用>
〇アレロック5㎎(オロパタジン)眠気あり
◎タリオン10㎎(べポタスチン)眠気ややあり 即効性あり
■効果あり(弱め)(個人的見解)
<1日1回服用>
●クラリチン10㎎(ロラタジン)眠気なし
●デザレックス5㎎(デスロラタジン)眠気なし クラリチンの改良 クラリチンより少量で効果も即効性あり
<1日2回服用>
●アレグラ60㎎(フェキソフェナジン)眠気なし
●ディレグラ配合錠(フェキソフェナジン・プソイドエフェドリン)眠気なし 鼻閉に効果あり ただし、1回2錠1日4錠
舌下免疫療法(シダキュア、ダニキュア)
■舌下免疫療法とは
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を一定期間、一定量、体に取り入れてアレルゲンに慣らし、アレルギー症状の原因となる過剰反応が起こらないように体質を徐々に変えていく体質改善の治療法です。また免疫に関係する細胞が安定することから、今後発症する可能性のアレルギーを予防する効果もあります。
今まで注射や液体の薬はありましたが、治療が複雑で通院が大変でした。
近年、ダニとスギの舌下錠が登場し自宅で服用できるようになりました!今までは12才以上からしか治療の適応ではなかったのが、2018年から年齢制限がなくなり、5才から治療可能になりました!!
■舌下免疫療法を受けられる方
・5才以上
・検査でスギ花粉症、またはダニアレルギーと診断された方
★こんな人におすすめ!!★
・毎年花粉症が辛いので少しでも症状を良くしたい
・まだ若いので、これからずっとアレルギーで薬を飲み続けるのかと思うと心配
・将来妊娠した時に薬が使えないのが不安
・高校・大学などの受験期が花粉症と重なるので少しでも良くしたい 薬が眠くなる
■舌下免疫療法を受けられない方
・アトピー性皮膚炎治療中の方(ダニに対する治療は不可、スギは治療可能です)
・重症の(安定していない)気管支喘息がある方
・アレルギー性鼻炎の原因がダニやスギ花粉ではない方
・妊娠されている方 近いうちに妊娠を希望されている方
・重症の心臓病(β阻害薬内服)、膠原病(ステロイド内服)の方
※高齢の方、スギ、ダニ以外のアレルゲンに対しても反応が高い方は、治療の効果が十分に得られない可能性がありますが、希望があればご相談ください
※授乳中の方、喘息の方は院長先生と相談の上治療するか決めますのでご相談ください
■治療を始める前に確認していただきたいこと
・3年以上続けることが推奨されている治療法です。長期間治療を受けることになります。
・毎日継続して服用し月に一度は受診する必要があります。
・すべての方に効果があるわけではありません。
・服用後5分間は飲食禁止。
・副作用が起こる可能性があります。
■治療の流れ
1.まず初めに、スギ花粉症又はダニアレルギーであることを検査で診断する必要がありますので、血液検査を行います。結果は1週間ほどかかります。
他の医療機関で検査済みの方は採血結果をご提示ください(できれば3年以内の結果)
2.血液検査の結果を確認し、スギ/ダニ舌下免疫療法の対象となるかを判定します。対象となる場合、通院のスケジュールや副作用、注意事項などについて詳しく説明します。治療を希望される方は、同意書に記入します。
※スギ花粉とダニの併用も可能ですが同時に開始することはできません。
症状の強い方を優先して、落ち着いた段階でもう一方を追加します。
3.診察後、処方せんを持って、前の薬局で舌下錠を受け取り当院で服用します。
舌の裏に薬を置き1分間保持した後、飲み込みます。
(※その後5分間は飲食禁止です)
30分院内で過ごしていただき再度診察、副作用がないことを確認して終了です。翌日からは自宅で服用して下さい。
4.1週間後、副作用の確認をして問題なければ通常の薬が開始になります。
以後、薬がなくなる前に来院して下さい。
月に一度は受診が必要となります。
3年から5年治療を続けます。
スギ舌下錠は花粉の飛んでいない6月〜11月に治療開始します。ダニはいつからでも始められます。
■治療
■有効性について
約8割の方が症状改善しています。治療開始後数か月で効果が実感できます。
スギ舌下の場合、10月から開始しても次の花粉症シーズンは症状軽減が期待できます。
治療は約3~5年ですが、4~5年ほど継続して治療を続けると、7~8年ほど治療の効果が持続されるため、当院では5年間を推奨しています。長期にわたってきちんと治療を行うことで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒みなどの症状改善、アレルギー薬の減量が期待できます。
1年ほど治療しても効果が認められない場合は、治療を続けるか医師と相談します。
■副作用について
約5割の方で副作用が認められますが、「口腔内のかゆみ」「のどの違和感」など軽微なものが多く治療の必要はありません。ほとんどは1ヶ月以内に落ち着いてきます。症状が続く場合は抗ヒスタミン薬を併用します。
国内で舌下免疫療法による重度の副反応の報告はありませんが、起こりえる副反応としてアナフィラキシーがあります。
他に注意しなければならない副反応として気管支喘息の発作、蕁麻疹があります。この場合は治療を中断し様子をみて続けるか判断します。服用30分以内、服用開始初期、スギ花粉飛散時期は副反応が起こりやすいので注意が必要です。